正しい人 5月 : 小栢 健太のクリストファー・ウィリアムス

5月
小栢 健太 クリストファー・ウィリアムス
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Christopher Williams
born in 1956, Los Angels,  lives and works in Dusseldorf




 
 
 
 
 
 



 とある鼎談でクリストファー・ウィリアムス|Christopher Williams がウィレム・デ・ルイージ|Willem de Rooij に応える。(インタビュアー:Jörg Heiser)

"It's also why I had the idea to not only appropriate a certain kind of image, but appropriate its very site of production - for example working with professional object photographers and their studio.
That means if I want to make a photo of apples I find an object photographer who often makes photo of apples." 
 
「僕にとってのアプロプリエーションとは、既成のイメージを盗用するということだけではなくて、イメージが生産される現場「サイト」自体をアプロプリエーションすることにこそアイデアがあるんだ。つまりそれはコマーシャルフォトに従事するプロのカメラマンと一緒に仕事をして、彼らのスタジオを含めた全体を借用するということになる。
もし僕がリンゴの写真を作りたいと思えば、それはリンゴの写真を普段から扱っているプロのカメラマンを探しだすということをまず意味する訳です。」ー*a

 トニー・ゴードフリーの名著『コンセプチュアル・アート | 2001年 岩波書店 木幡和恵訳 』を読み返すと、コンセプチュアル・アートは「レディ・メイド」「介入(インターベンション)」「ドキュメンテーション」「言葉」のいずれかの形態をとると書かれている。例えば、広告媒体などから既成のイラストレーションや写真イメージを流用、あるいは盗用し、それをソースに一般顧客向けの量販店にならぶ工業製品を一部スケルトン状に加工。マスプロダクションという現実への介入が始まる。これをコマーシャル・カメラマンが精度の高いライティングと最高級のカメラで撮影し、美しくプリントは出来上がる。こういう一連の場、つまりサイトで彼は仕事を行う。タイトルには、被写体となったモチーフの商品名、撮影したスタジオ、日付などが明示される。作家は造形に対して直接的に手をかけず、ただ選択による決定をなしたことが裏付けられる。このタイトルの使用法は、全体がドキュメンテーションとして提示される契機をつくり、イメージを一連の結果物として拘束し続ける、あるいは我々に約束する。ゴードフリーの言うコンセプチュアル・アートを認知する4つの形態はここに見事に周到される。造形による唯一性の美学獲得に対して無関心を、仮にも態度として装うことは、クリストファーの作品をコンセプチュアル・アートそのものすらもアプロプリエーションするといった多重の
事態へと、戦略的に向かわせる。まわりくどいようにしてまでも、映さなければならないマス・イメージって一体なにものだ。

"the connection between conceptualism and image, between appropriation and autonomy."
 
「コンセプチュアリズムとイメージは交渉し、アプロプリエーションと自律性は関連する」ー*b

*a, *b:frieze | October 2010 | 『 As We Speak』から引用、和文は筆者訳。






テキスト:小栢健太|アーティスト