正しい人 11月 : 泉 大の「両翼の風景」







11月
泉 大両翼の風景」
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若松孝二 
born 1936–2012 in Miyagi, Japan.










若松孝二さんが亡くなられました。
遺作となってしまった映画は、未公開で中上建次が原作の『千年の愉楽』です。

こんなことを言ってしまうと元も子もないですが、自分が若松孝二さんについて語れることなどありません。
あの人について考え、分析もどきのようなことをしていることに気づいたとき、自分が非常にケチな人間に思えて、
格好悪いと感じ、同時に失礼なことをしている気分にもなります。
そういう風に感じる人が何人かこの世にはいて、若松孝二さんはその中の一人です。
自分ができることは、あの人の映画や話している姿を見て、鏡を見るように自分を見る、ということ位なものです。

手前勝手ですが、自分は絵を描き、バンドを組みドラムを叩いています。常々思うことですが、これらは、遊び、です。
眉間に皺を寄せてやることでも、他人の思惑に苛まれることでもなく、
寒さのある秋の日差しのなかを、キンモクセイの香りを感じながら走りまわる、遊び、です。

絵を描いていたり、ドラムを叩いていると、体が喜んでいるのがわかります。
何とか酸や、ビタミン何とかや、ビフィズス何とかではなく、
憤怒、という美しい成分を体がつくり出し、全身を駆け巡って血行がよくなり、元気になります。
自分はこれが健康なんだな、と思います。
間違いも勘違いも一笑できる元気が沸いてきます。
そして、若松孝二さんのことを想うと、それと同じような元気が沸いてくるのを感じます。

鬱々と考えれもしないことを考え、大義名分を背負ったような気分になり、斜め下に目線を落とすことの白々しさ。
そもそも誰それの作った、考える人、が考えていることなんて、金儲けか女性のことでしょう。

喪に服して、目一杯、遊んでやろうと思います。






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